東洋医学のご案内
東洋医学的治療とは
私は東洋医学的治療の中で漢方を用いた治療を行っています。東洋医学的診断 (証) は、西洋医学的診断とは異なった方法を用いています。問診の他、舌診、腹診、脈診などの方法を用います。同病異治とか、異病同治と言われるように、同じ病気でも体質や病態によって異なる薬を使いますし、異なる病気でも同じ薬を使うこともあります。
東洋医学的治療は内科的、心療内科的、精神科的疾患は勿論のこと、皮膚科的疾患、耳鼻科的疾患、婦人科的疾患等、様々な病態に対して対応可能となります。従って、全人的治療を実践していく上で、患者さんの様々なニーズに取り敢えず応えることが可能になり、多科に渡って受診する必要が無くなる場合もあります。
*東洋医学的治療を用いる意義
例えば、うつ病を治療する際に、漢方薬だけで治療するよりも西洋薬を用いた方が遥かに効果的です。しかしながら、「冷え症」とか「ほてり」を改善する薬は、漢方薬にはありますが西洋薬にはありません。この様に、西洋薬だけでは対応できないが、漢方薬では対応可能な病態はたくさんあります。従って、内科的、精神科的処方に漢方を併用することは、患者さんのQOLを高める上で、とても大切な方法と考えています。
東洋医学との出会い
が東洋医学に始めて接したのは富山医科薬科大学在学中のことでした。一番印象に残っているのが和漢薬診療部の寺沢先生の教授回診でした。教授が「お薬は効いていますか」と問いかけた時に、「素晴らしい!こんなに良くなるとは思ってもみませんでした」と患者さんが返答したことでした。漢方というのは、効くときは凄いなと思いました。
月日の経つのは早いもので、同時代に在学していた知人が既に何人も各地の大学の東洋医学の教授になりました。心理療法家に成りたくて精神科志望だった私が、「何で精神科は心理療法を軽んじるのだろう」と悩んでいた時に、「心療内科をやってみたら如何かね」とアドバイスしてくれたのは寺沢先生でした。日大の心療内科に入局してからは、桂戴作先生の呼びかけで始まった漢方心身症研究会を中心に独学で漢方を勉強していました。その後、稲木一元 松田邦夫 秋葉哲生 大野修嗣 高山宏世 等の先生の講習を受ける機会に恵まれ、現在も常時講習を受けながら、日常の臨床でも頻繁に漢方薬を使用しています。
全人的医療と東洋医学
私は全人的医療を実践したくて心療内科に進みました。デカルト以来の心身二元論的見方は「精神」と「身体」を分けて考えることにより西洋医学の発展に寄与しました。それに対して、東洋医学では身体の病変と精神の変調を同時に把握する診察法をとっており、心と身体は一体のもの(心身一如)という考え方に基づいており、心と身体の関係を考える心身症を主な疾病対象とする心療内科とは相性の良いアプローチと考えられます。しかも、生態の恒常性を如何に維持し、その歪みを補正するかに主眼を置いています。そして、「悩める人、その人を大切にする」という全人的医療を実践する上でも、東洋医学的アプローチはとても役に立ちます。